妊娠発覚、事業譲渡そして……。おなかの赤ちゃんが気づかせてくれた、自分が本当にやりたいこと。

妊娠がわかった時、私はファッションシェアリング分野で新規事業を起こしていました。サービスの名前は「Licie」と言います。
この記事は、去年2016年の9月に別の自分のブログで書いたものですが、反響も大きかったので、キャリアの迷路に悩む女性に向けて、少しでもお力になれればと思い、再掲します。

一般的に女性にとって、結婚・妊娠・出産とキャリアの両立は大きな悩みのひとつだと思います。
それは類もれず私もそうで、もともと起業したきっかけのひとつとして、私の母がそうしてくれたように、いつか自分が母親になったら、なるべく子どもに寂しい思いをさせたくない、一緒に居られる時間を増やしたいと思っていたから、比較的自由の利くフリーランスを選んだというのもあります。

妊娠がわかったのは6月末。そこから悩みに悩んで、私は同分野で最大手だった会社に事業譲渡を決めました。
今回の私の選択がどれぐらいの方にメッセージとして届くかはわかりませんが、サービスを一度はローンチした身として、
「子どもが原因でやりたいことをあきらめた」
「やはり、妊娠・出産はキャリア女性にとって弊害だ」

と思われてほしくない。

妊娠・出産を控えた女性の一人として、悩んだこと、迷ったこと、等身大に感じたことを想いのまま記します。

内容によっては、もっと他に方法があったのでは、それでいいのか、と思う方もいらっしゃるかもしれません。けれど、私は自分で考え、選択したこの答えに納得し、満足しています。少々長くなりますが、お付き合いください▼▼

確かに、事業を閉じようと本格的に動き出したのは妊娠がきっかけです。
しかし、子どもが原因でやりたいことをあきらめたのではなく、お腹の子どもが、自分が本当に【一番】やりたいこと・どう人生を歩んでいきたいのかを、強制的に気づかせてくれた、って表現した方が正しかったです。

話は少し、遡ります。実は、もともとLicieは弊社だけで始めた事業ではありませんでした。諸々の事情は割愛させていただきますが、運営元が弊社となり、別の会社が事業元となってスタートしたのですが、結果的に弊社で引き取ることとなりました。

もちろん、私が希望しての引き取りです。

レンタルをやってみたいと最初に口火を切ったのは自分ですし、メディアに全面的に出ていたのも自分です。準備に関わってくれている人だってたくさんいました。そのため途中でやめるなんて考えられない、リリースしなきゃいけないと、あの時から「やりたい」という意思よりも「やらなければいけない」という義務感のほうが、わたしの中で大きくなっていました。

始めたのは2014年12月ごろ。
同年秋ごろから、日本ではまだ存在しなかったこの事業モデルが数社一気に出て、私たちのLicieもその波に乗って、巷ではちょっとした「ファッションレンタルフィーバー」みたいなのが起こりました。この頃は、事業自体が成功するか失敗するか。どうなるかは予測がつかないというのが市場の見方でした。そのため私もいつものごとく「やってみなきゃわかんないじゃん、チャレンジしてみよう!!!」と、やらないで後悔よりやって後悔の精神で、なんのためらいもなく、事業を引き取って進めることにしたのです。

この市場は幸運なことにあっという間に注目市場となり、二年たらずで私が把握している限り13社もの会社がサービスを出し、資金力ある大手が参入し、何億も調達する競合がどんどん出てきました。

こんな状態のうちにも「資金調達しないか」という話がきたこともあります。けれど、話を聞くたび、進めるたび、どうしても胸の奥の違和感があって・・・

みんな上場・イグジットを当たり前に考えてる。

私ってそれがしたかったんだっけ・・・?

そんな環境に身を置いていると、「木原さんも資金調達するんでしょ!」という空気になっていて、「はい、うちはイグジット目指してます!」ととりあえず言っていました。

でも、全然言葉に魂がこもらないんです。

自分の言葉が自分じゃない気がしていて、フィーバー期間中のこの頃からすでに、「私が望んでいた働き方ってこういうことだったっけ?」っていう疑問が心の奥底にありました。

言葉に魂が、芯がこもっていないと、軸がぶれてきますよね。

「ゆきねえが本当にしたいことってなに??」
っていうビジョンがふわふわしてきてしまったんです。

これは正直、仲間にも気づかせてしまって、余計不安にさせちゃって。上に立つ人間としても、完全失格でした。たとえ自分が見えなくなっても、突き通す強さがなければいけなかったのにね。

いつしか、「やりたくてはじめたこと」が、「義務」と「責任感」だけで動くようになり、起業から3年間ずっと感じてた「苦労はあるけどやりたいことやってるから楽しい!」っていう気持ちすら消え失せて、自分じゃない感覚になってました。

仕事が楽しくないってなったのは、正直、初めてのことでした。
求めてたことがそもそも違ったんです。

上場なんかしなくていい。
イグジットもしなくていい。

無借金経営で、100%自分の責任がとれる範囲で、身の回りの人を笑顔にする企画や商品、サービスを作って、それは形を変えてもゆっくりずーっと愛されて、口コミで広がって、続いてく。自由に仕事をしながら、子どもの成長をそばで見ていく。そんなスタイルが求めてた私の理想だった。

違う働き方を経験して、初めて身にしみてわかったことでした。
そう、まさにガールズバッグを作っていたときのような働き方。

情けないことに、身を以て経験しなければ、私はそれに気づけなかった。
でもね、そんな働き方に戻りたいなんて、私のわがままじゃないですか。

会社がどんどん自分のものとは違うものに変化していって苦しむ私に、「ガールズスタイリングという会社はあなたの会社なんだから、苦しいと思うんだったらその事業はやめればいいし、もっとワガママに経営したらいいのに」と、当時、旦那はずっと言ってくれてました。

けど、そうだよねーと口ではいうものの、心は「だって始めたことだし、責任があるから!」との一点張りで(笑)

でも、きっと、たぶん、間違いなく、私の器では新しい市場を確立するのは無理だ。
私には、億単位のお金を動かす覚悟がない。

自分の中で、答えはとっくに出ていました。
けどね、それを実行する勇気もなかった。
「根性なし」って思われるのが悔しかったから。

結果、顔つきも険しくなり、仕事に行きたくなくなり、次第に私は体調を崩し、自律神経を乱して、睡眠障害に陥り、結果病院にも通うようになりました。(妊娠してから完治しています)

でも、気持ちが前に進んでないのに、ビジネスが上手く回るわけないですよね。

流れはどんどん悪化し、環境はますます厳しくなってきて、それでも現状を打開しようと、再度の資金調達に帆走し、個人保証付きでお金を借りて、事業を立て直そうとしていたとき・・・

妊娠がわかりました。

赤ちゃんが、私を止めてくれた。

そう思いました。

きっと、あのままだったらもっと血を流すだけ流して、借金もいっぱい作って、最悪な状態で終わっていたかもしれない。
いろんな人にもっと迷惑をかけたかもしれない。

なにより、自分のサービスを心から信じる気持ちよりも、他の感情に支配されていることが、とてつもなく苦しかった。

きっと、この子は天からそれを見ていて、見かねて、「ママ、もういいよ。ママは自分のやりたいようにやっていいんだよ」って、私を止めに来たのかなって、今ではそう思っています。

こうして、私はリシェをクローズすることを決意しました。

誤解しないでいただきたいのは、今でも、ファッションレンタル業界の可能性を私は信じています。繰り返しになりますが、私には、その可能性を実現できる力がなかった。そして、望む働き方が異なっていた。。それだけです。

私は、自分のやりたいことを棚卸しし、初心に戻ることにいたしました。
そして・・・いつか子どもができたら作りたいと思っていた商品をつくることにしました。

そう、マザーズバッグです!!!!

子どもは欲しい。
でも仕事も諦めたくない。

やっぱりね、子どもできたら、何もやりたいことができなくなるってイメージ、あると思うんです。私も正直、妊娠して、「人の命、体の中で育てている」って素晴らしい事なのに、その事実よりも、あーこんなにも、妊婦って社会的弱者として扱われるのかって思い知ったこと、たった数ヶ月の妊婦生活でもなんどもあります。

けどね、まだ産んでないし、育児も経験してないので、なんっっっっっっにも言えない立場を承知で言いいますが、何もできないわけじゃないと思うんですよ。

確かに実務ができる時間は減るし、稼働できる量は圧倒的に落ちるかもしれません。
でもベビーシッターや家事代行サービスも充実しているし、やり方や工夫次第で、やりようはきっとあると思う。

人間の集中時間ってせいぜい数時間だし、その集中できる時間でやれることまとめてやれば多分大丈夫!笑って。

私は、子どものそばにいながら、自宅で基本的に作業し、打ち合わせのときや必要時だけ一時保育に預け、隙あれば 子連れ同行で働く、そんなスタイルへのシフトを決めました。

けれどその決断の裏で、一緒に働いてくれた仲間達。相談に乗ってくれた友人。支えてくれた家族。そして、私の決断を応援してくれる旦那。
たくさんの人に迷惑をかけたのも事実です。

この二年間、20代で一番激動な二年間でした。
たくさん迷惑をかけて、たくさんお金を使って、いろんな人を巻き込んでしまい、たくさん失敗をしました。

この二年間を無駄にしないためにも、学んだ経験を全てを糧にしていこうと思います。

※この記事は2016年9月に別サイトで発表したものです

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